top of page
社会保険労務士 中島事務所 代表

テレワーク導入で使用者が知っておくべきポイント

一部地域を中心に感染者数が急増してきましたね。

前回の緊急事態宣言時は,場当たり的にテレワークに突入してしまった企業様もあったようですので,

テレワーク実施におけるポイントや留意点をあらためて箇条書きでまとめました。

参考にしていただければ幸いです。


※本コンテンツは,あくまで抜粋であり,すべてを網羅していないということにご留意ください。


就業規則について


テレワーク導入には,就業規則にテレワーク勤務に関して規定しておくこと

就業規則本体に直接規定か,「テレワーク勤務規程」といった個別の規程を定めるかが必要


(就業規則に規定する場合の規定すべき内容)

・テレワークを命じることに関する規定

・テレワーク用の労働時間制度を設ける場合,その労働時間に関する規定

・通信費などの負担に関する規定


※テレワーク対象者(例えば職種や社歴など)の明確化

※通信費・⽔道・光熱費などの費⽤を会社が負担するのか,従業員が負担するのかを,事前に明確化

※就業規則を変更した場合は,従業員代表の意見書を添付し,所轄労働基準監督署に届出するとともに従業員に周知が必要。※就業規則の作成・届出義務がない会社では,労使協定の締結や労働条件通知書で労働者に通知が必要



自宅でのテレワークの留意点


自宅(サテライトオフィスなどではなく)でテレワークをされる場合の留意点は,以下のとおり


①労働条件の明示

事業主は労働契約締結に際し,就業の場所を明示。在宅勤務の場合には,就業場所として従業員の自宅を明示すること


②労働時間の把握

使用者は労働時間を適正に管理するため,従業員の労働日ごとの始業・終業時刻を確認し,記録


③業績評価・人事管理等の取扱い

業績評価や人事管理について,会社へ出社する従業員と異なる制度を用いるのであれば,その取扱い内容を説明しておく。また,就業規則の変更手続も必要


④通信費・情報通信機器等の費用負担

費用負担については,あらかじめ決めておく。従業員に通信費や情報通信機器等の費用負担をさせる場合には就業規則に規定す

⑤社内教育の取扱い

在宅勤務等を行う労働者について,社内教育や研修制度に関する定めをする場合にも,当該事項について就業規則に規定



労働時間制度のポイント


●テレワークは,すべての労働時間制度が適用可能

テレワーク時に原則的な労働時間制度(1日8時間,1週40時間)で働く従業員が,育児・介護など私用のために所定労働時間を柔軟に変更できるようにすることで,育児・介護などとの両立に資することができる。この場合,就業規則に規定しておくことが必要で,企業が所定労働時間を一方的に変更することは不可


●労働者の労働時間が算定できる場合

原則,通常の労働時間制(週40 時間,1日8 時間)が適用可能

変形労働時間制やフレックスタイム制も活用可能

• 1 か月単位の変形労働時間制

• 1 年単位の変形労働時間制

• フレックスタイム制


●労働者の専門性が高く,仕事の進め方を任せた方がよい場合

裁量労働制を利用可能

• 専門業務型裁量労働制

• 企画業務型裁量労働制


●どうしても労働時間の把握ができない場合

事業場外みなし労働時間制も活用可能

※テレワークにおいて,事業場外みなし労働時間制を採用する場合は,使用者の具体的な指揮監督が及ばず労働時間を算定することが困難であるという要件クリアが必要



安全衛生関係法令の適用


労働安全衛生法等の関係法令等に基づき,過重労働対策やメンタルヘルス対策を含む健康確保 のための措置を講じることが必要


●自宅等でテレワークを行う際の作業環境整備の留意

テレワークを行う作業場が,自宅等の事業者が業務のために提供している作業場以外である場合には,事務所衛生基準規則,労働安全衛生規則及び「VDT作業における労働衛生管理のためのガイドライン」の衛生基準と同等の作業環境となるよう,テレワークを行う労働者に助言等を行うことが望ましい


●テレワーク時の労災保険の適用

テレワーク実施者が労働者である以上,通常の就業者と同様に労働者災害補償保険法の適用を受け,業務災害又は通勤災害に関する保険給付を受けることができる



人事評価のポイント「公正な評価」と「目標管理」


●勤怠管理・業務管理

テレワーク時には,従業員がオフィスと離れて仕事を行うため,勤怠管理(労働時間の管理)や業務管理(業務の遂行状況の把握)の方法を決めておくこと

※テレワークを利用しようとする従業員に対して社内制度やルールを設け,適正な労働が可能な環境づくりが重要


●テレワーク時の給与制度

業務内容や所定労働時間といった労働条件などに変更がない限り,特に変更する必要なし


●テレワーク時に発生する費用

自宅でテレワークを実施する際に必要な通信費や ICT 機器などの費用負担については,あらかじめ労使で十分に話し合い,就業規則などで定めておくことが望まれる。特に従業員の負担とする場合には,その内容を就業規則に規定すること


●テレワーク時に支給しない手当

テレワークの導入によってオフィスに通勤しない場合の通勤手当など,支給しなくなる手当がある場合は,その取扱いについて企業とテレワーク利用者で事前に合意しておく。ただし,原則として所属オフィスに出勤しないで行う「完全終日在宅勤務」以外のテレワークでは通勤手当を支給することが一般的


●中抜け時間について

一定程度労働者が業務から離れる時間(いわゆる中抜け時間)について,使用者が業務の指示をしないこととし,労働者が労働から離れ自由に利用することが保障されている場合は,休憩時間や時間単位の年次有給休暇として取り扱うことが可能


●通勤時間や出張旅行中の移動時間

テレワークの性質上,通勤時間や出張旅行中の移動時間に情報通信機器を用いて業務を行うことが可能であるが,使用者の明示又は黙示の指揮命令下で行われるものは「労働時間に該当」


●勤務時間の一部についてテレワークを行う際の移動時間等について

・使用者が移動することを労働者に命ずることなく,労働者自らの都合により就業場所間を移動し,その自由利用が保障されている時間は「休憩時間として取り扱う」ことが可能。

・使用者が労働者に対し業務に従事するために必要な就業場所間の移動を命じており,その間の自由利用が保障されていない場合の移動時間は,「労働時間に該当」する

※中抜け時間や部分的テレワークの移動時間の取扱いについて,上記の考え方に基づき,労働者と使用者との間でその取扱いについて合意を得ておくことが望ましい


●フレックスタイム制の活用

労働者の都合に合わせて,始業や終業の時刻を調整することやオフィス勤務の日は労働時間を長く,一方で在宅勤務の日の労働時間を短くして家庭生活に充てる時間を増やす,といった運用も可能


●長時間労働等を防ぐ手法

テレワークについては,業務の効率化に伴い時間外労働の削減につながるというメリットが期待される一方で,労働者が使用者と離れた場所で勤務をするため相対的に使用者の管理の程度が弱くなるおそれがあること等から,長時間労働を招くおそれがあることも指摘されている


(テレワークにおける長時間労働等を防ぐ手法例)

①メール送付の抑制

②システムへのアクセス制限

③テレワークを行う際の時間外・休日・深夜労働の原則禁止等

④長時間労働等を行う労働者への注意喚起


※在宅勤務についてみなし労働時間制を適用する場合であっても,労働したものとみなされる時間が法定労働時間を超える場合には,時間外労働・休日労働に関する労使協定(36 協定)を締結し,所轄労働基準監督署長へ届け出ることが必要。深夜に労働した場合は深夜労働に係る割増賃金の支払いが必要



(参考文献)
テレワーク実践活用 テキストブック 令和元年度 総務省
令和元年9月作成 雇用環境・均等局パンフレットNo.2
厚生労働省 テレワーク導入のための 労務管理等Q&A集
閲覧数:1回0件のコメント

最新記事

すべて表示

障害者の法定雇用率引上げについて

民間企業の法定雇用率と対象事業主の範囲が以下の通り、変更になります。 2.3%(令和5年 ) ⇒ 2.5%(令和6年4月/40人以上 )⇒ 2.7%(令和8年7月/37.5人以上) 対象事業主の義務 ・毎年6月1日時点での障害者雇用状況のハローワークへの報告 ・...

年収の壁・支援強化パッケージ

岸田内閣が発表していた年収の壁への対策について、 厚生労働省のホームページにて情報が公開されています。 問い合わせ先も記載されていますので、参考になさってください。 いわゆる「年収の壁」への対応|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

令和5年度 最低賃金額について

地域別最低賃金の答申がなされました。 47都道府県で、39円~47円の引上げ(引上げ額が47円は2県、46円は2県、45円は4県、44円は5県、43円は2県、42円は4県、41円は10都府県、40円は17道府県、39円は1県) 詳しくは、厚生労働省のサイトをご確認ください。...

Comments


bottom of page